第一章 ザルゴの街へ

 アングレイの年齢は、誰も知らない。
 他の誰も聞いたことがないし、アングレイ自身も記憶を失っているので、正確な誕生日がわからないのだ。
 人間であれば、肉体の衰えがあればそれなりの年齢だと推定出来たりもするのだが、アングレイの場合、彼がバイオボーグであるということもあり、年齢が推定できないのである。
 バイオボーグというのは、メンテナンスを定期的にきちんと行っていれば、意外と長持ちするらしいのだ。
 アングレイが、自身の体のメンテナンスを頼んでいる『医者』は、ここバライソの街からずっと離れた、アズールという村はずれに住んでいる。
 そういえば、その医者に聞けば年齢とかが分かるんじゃないのか、と誰かが言い、そのことを医者に尋ねた人がいるらしい。
 だが、その医者の答えもあいまいだった。
 驚いたことに、『医者』であるはずのその男は、朝から酒を浴びるように飲んでいて、アルコールがないと手の震えが止まらないほどのアルコール中毒体質だった。
 しかも、アングレイの名前は何とか覚えていたが、年齢のことなどそのほかの情報などは分からないに等しかった。

バライソの街を抜け、ザルゴの街の通りにある店に入る。

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