第一章 ザルゴの街へ 2

「酒、何かあるか?」
店に入り、カウンターに腰掛けると、店主らしき男に、ぶっきらぼうにそう言うアングレイ。
声をかけられた方のひげ面の男もアングレイと大差ないぶっきらぼうさで答える。
「なんでも。何がいい?」
「じゃぁ、一番きついのをくれ。火が付きそうなやつだ」
と、アングレイが言うと、ひげ面の店主はクーラーボックスから小さなボトルを取り出した。
「じゃ、こいつだなぁ。好きなだけ飲みな。飲めたら、だけどな?」
そう言いながらボトルの横に、チェイサー並みの小さなグラスをことりと置いた。
これで試し飲みをしてみろということかと、アングレイはボトルのキャップをひねり、小さなグラスにとろとろと中の液体を注ぐ。
注いだそばからピキピキと音を立てて、氷のように固まっていくが、またすぐにその氷も解け始める。
「まずは、一口飲んでみな」
相手を試すような目をしながら、店主は笑った。
「遠慮なく」
そう呟いて、アングレイは小さなグラスを持つと、一息にそれをあおった。
「あ、おいっ」
慌てる店主を尻目に、ごくりと喉を鳴らしたアングレイはにやりと笑い、そのボトルに手を伸ばした。
「なかなか上等だな。よく効きそうだ。
いいんだな? このまま飲んでも?」
ボトルを目の高さまで上げ、笑顔でボトルを口にしようとしたとき、店主が声を上げた。
「あ、あんた、ハンターだな?
そいつを飲んで、のどが悲鳴を上げねぇはずがねぇんだよ。
なのにあんたは平気な顔で……。しかも、まだ飲み足りねぇとか言う……。
あんた……。
『アングレイ』だろ!」
店主にそう言われたアングレイは、その通りだといわんばかりにボトルを右手で高く差し上げ、そのあとそれを口に持っていった。
「ありがてぇ。名前を知っててもらえてるとは、光栄だな」
笑っているアングレイからボトルをひったくると、店主は小皿にそれを少しだけ注ぎ、マッチで火をつけた。
青白く燃える炎を見ながら店主が言う。
「見てのとおり、すぐに火がつくくらい、この『スピリタス』はアルコール度数が高いんだよ。
これを普通に飲めるってことは、あんたの喉が普通じゃねぇってことだからな」

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