第一章 モウエンの淡い恋

 実は、帝都でひそかに人気者だったモウエンは、まったくと言っていいほど女っ気がない。
 そんなモウエンの心を射止めた女性がいた。
 武骨で巨体のモウエンとは真逆の、小柄でかわいらしい女性だ。いわゆる、『美女と野獣』というほどではないが、お互いの見た目のあまりの不釣り合いさに、モウエンの方がしり込みしまくっていたのだ。
 その巨体にもかかわらず、意外と繊細な心の持ち主であり、自分が信じたものへの一直線な心意気を、即座に見抜いた彼女。
 彼女は、常からモウエンのダルカスへの忠心を後押ししていた。
 その時にかけてくれた言葉が決め手だった、と、のちにモウエンは語る。だが、その話を人づてに聞いた彼女は、『そんなことを言ったかしら』と、ケラケラとモウエンの言葉を笑い飛ばしたという。

コメント

タイトルとURLをコピーしました