続 痴漢電車 4・愛

 男があたしの前に立って、あたしをジロジロ見ている。何か、満足そうにわらっているみたいに見えるのがちょっと腹立つけど。何なの、マジで。
 机の上に置き去りにされていたあたしのカバンの中から、学生証を取り出して、それをあたしのおっぱいにのせた。何してるんだろう。
「何するの?」
 男の行動の真意を知りたくて、そう聞いてみた。男はあたしのあたまをちょん、と触るように髪をなで、こう言った。
「記念撮影。せっかく上手にセットできたし、と、思ってな?」
 上手にセットできた。というのは、あたしの身体に貼りつけたこういうののコトみたい。記念撮影とか訳分かんないし……。
 男は、ポケットからスマホを取り出すと、本当にあたしの裸を撮影した。
 マジで撮るの!? って、まだ何かする気……。
 写メを撮ったあと、男はスマホをいじっていた。撮った写メを確認してるのかと思ってたけど、またスマホを構えてこう言ってきた。
「カメラの方見て、自己紹介しろよ。学生証 も写ってるんだし、大学名とかもな?」
  うわっ、何言ってんの? 趣味悪っ……。でもやらないとダメ……なんだよね? マジ最悪……。
 抵抗のつもりで唇をかんでじっと男を睨んでいたんだけれど、男は態度を変える様子がない。
 仕方なく、あきらめて、言われた通りにすることにする。
「道浦愛です。○○大学○○学部の1年生です。えっと、3サイズは……。」
 言われてないコトまで思わず口にしてしまったけど、もう遅い。
 撮影がおわると、男は今撮ったばかりの写メとムービーを見せてきた。 改めてこうして自分の裸を見せつけられると恥ずかしくてたまらない。
「キレイに撮れてるだろ? これ? 俺、才能あるんじゃないかな、カメラの。」
 男はそう言ってあたしの目の前でスマホをひらひら動かしている。
 何が才能あるだ、ばかじゃないの。うぬぼれるのもいい加減にしてよ。両手を手錠でつながれているので、それを左右に動かし、当たるワケもないのに両足をバタつかせて男を蹴ろうとしてみる。
「ちょっ……そんな……。」
 男はもう一度さっきの写メを拡大して見せてきた。拡大すると、学籍番号とかまで. ハッキリ見えてしまう。
「な? このごろのカメラは性能がいいから拡大したらこんだけバッチリ分かっちゃうんだなあ?」
「ちょ、本当にやめて……。」
 男がニヤニヤしているということは、言っていることがシャレや冗談ではないように感じる。
 それは嫌だっ……。
 本気で焦り始めていると、男が低い声でこう言った。
「じゃあ、ゲームしてみるか?」
「ゲーム?」
 急に何を言いだすんだ、この人? こんな状態 でゲームとか出来るワケないし……。
「そう、ゲーム。今から10分間、この状態で愛が逝かなかったら、さっきの写真と動画は消してる。」
「イ……く?」
 逝くとか逝かないって何? 何かマンガで見た気もするけど、どーゆうコトなんだろ。
「うん。まぁ、まだハッキリ分かってないかもしれないけど、ようは愛が、何されても気持ちよくならなければ、愛の勝ちってコトだ。もし、負けたら……。」
「負け……たら……?」
 ごくっとツバを飲み込んでそう尋ねる。
 ロクでもないペナルティとか考えてるんでしょう、どうせ……。
 あたしが必死にそう尋ねたら、男は笑っていた。
「負けたら……。そうだなぁ。さっきの写真を引きのばして印刷する。んで、額に入れて、店に飾ってやるよ、な?」
「え……。ヤダ……そんなの。」
 冗談じゃない。てか、冗談にしてもひどすぎる。スマホの画面で見ても恥ずかしいのに、大きくしてプリントするって、何考えてんの? バカじゃない。
「負けなきゃいいだけのことだろ? やるよな?」
「えっ……。」
 何それ。あたしに選択権ないってコト? ずるくない? 聞き方おかしいって、絶対。
 心の中でブツブツ文句を言いつづけていたん だけど、結局、ゲームをする羽目になってしまった。

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