こんなところでブラウスのボタンを外されたら周りに下着を見られてしまう。なんとかそれは阻止しようと、体をひねって抵抗をつづけた。
少し間が空いて、男がごそごそ動いて何かを取り出した。
次の瞬間、左の頬に冷たいものが触れた。
それが金属製の何かであることはすぐに分かった。刃物だったらどうしよう……。
『おとなしくしろって言ったじゃないか。これ以上じたばたすると、けがをすることになるぞ?』
どうしようか迷っているときに、イヤホンから男の声が聞こえてきた。
けがをするっていうことは、やっぱりこれは刃物なんだ……。
「ひっ……。」
一言でそれを理解したあたしは、つい声を漏らしてしまった。
『わかったか? おとなしくしとくんだぞ?』
イヤホンから男の声が続いて聞こえてくる。
下手に逆らうと何をされるかわからない。半分あきらめ気味に、あたしは首を縦に振った。
刃物を持っているなら下手に逆らうわけにいかない。目隠しまでされているだけに、何もできないのが悔しい。
そんなことを思っていると、当たり前のように男はブラウスを脱がせようとしてくる。
(本当にブラが見えちゃうって……。)
そう思って焦っていると、ブラウスをはだけられてしまった。そのままずるずると腕までブラウスを抜かれていったのだけど、さっき後ろ手に固定されていたのが逆にラッキーだったのか、ブラウスが抜き取れないのだ。
助かった、と思った次の瞬間、男の舌打ちが聞こえた。
(舌打ち……。やばい……。)
変にブラウスが引っ張られている感じがする、と感じた時、布が切られていく音が聞こえた。
(うそ!? ブラウス切ってるの? ちょっと……。)
せっかくのお気に入りのブラウスだったが、それこそ声を上げたり動いたりしてナイフで体を傷つけられたらまずい。
ブラウスがただの布きれみたいになって、体から離れていく。手首のところでかろうじて引っかかっているみたいだったけど、それも切り抜かれてしまった。
(あぁ……。マジで切られちゃった……。)
ブラジャーがあるとはいえ、上半身がさらされてしまった。手が固定されているので、隠そうにも隠せない。じれったくてもじもじするしかない。
『いい格好になったなぁ。みんなお前のおっぱいを見たがっているぞ……。それより先にスカートを脱がせてあげないとなぁ……。』
また男の声が耳元から聞こえてくる。
(え、嘘、やだ。下まで脱がされたりしたらほぼ裸じゃないのよ……。)
そう思ってせめてもの抵抗に体をくねらせ、スカートのホックを見つけにくいように動いていたつもりだった。
『ふつ。』
声にならないようなかすかな笑い声が耳から聞こえてきた気がした。
男はあたしのスカート越しに尻を撫で始めた。本当にこの人はスカートも脱がせてしまいそうだ。それこそ、こんな車内で裸にされてしまうなんて恥さらし以外の何物でもない。どうにかして抵抗しないと、と、思っていた次の瞬間、あたしの背中のところでぷつっ、と何かがはじけた感触があった。
(へっ? なに、いまの……。)
少し間を開けて、男が何をしたか理解した。
あたしのブラジャーのホックをはずしたんだ。スカート越しにお尻を撫でていたからそっちに気を取られていたけど、その隙にさっさと男はブラジャーのホックをはずしてしまった。
(えぇぇ……。)
調子に乗った男は、今度は右の肩ひもをピンと引っ張って、それをわざとぱちんと音を立てて肩にあてた。
声は出なかったものの、もう何をされるかわからなくなり、肩に紐が当たった瞬間、びくっとしてしまった。
そしたら、肩紐が切られた。右側が締め付けられなくなった。
「んっ……。」
どうしようもないんだ、と思いながら、声が漏れてしまった。
そうこうしているうちに、左側の紐も切られてしまい、ブラジャーがブラジャーでなくなってしまった。何がどうなったのかはわからないが、胸にあたっていたものが離れていったことだけは確かだ。
スカートがまだあるとはいえ、あたしは車内で一人、おっぱいが丸出しの状態にされてしまっていた。
痴漢電車 4・愛

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